異体字とは

皆さんは「異体字」というものをご存じでしょうか。初めて聞くかたもいらっしゃるかと思います。「異体字」をあえて簡単に言うとすれば、「ある漢字と同じ文字と見なされているが形が異なる文字」とでもいいましょうか。言わば、オリジナルの文字に対し別バージョンの漢字というわけです。
もう少し正確に言うと、「異体字」とは漢字の標準字体以外のもので、標準の字体とは異なるが、意味と発音が同じ漢字、ということです。別字、別体字などとも言うようです。
今回はそんな「異体字」についてご紹介します。なお本記事は漢字や文字に関する学術的な解説ではなく、一般的に諸説あるものの紹介を含みますので、その点ご理解いただければと思います。

異体字の生まれたわけ①: 旧字・新字

異体字が生まれた理由には、いくつかのパターンがあるようです。
まず旧字と新字の違いです。戦後制定された「当用漢字」で、約500字の漢字が簡易字体に切り替えられ、新聞雑誌など一般的な印刷物などは新字体を使うようになりました。ただし、表記上特に理由のある場合や、人名・地名など固有名詞には旧字体を使う場合があるので、それらもまだまだ現役と言えます。新字体と旧字体の違いには、例えば「学」と「學」、「国」と「國」のようなものがあります。このような場合、現在は新字体のほうが一般的に通用しているので、旧字体のほうが異体字ということになりますね。


旧字体と新字体の一例

異体字の生まれたわけ②:俗字・略字

次に、手書き文字で俗字・略字として慣習的に使われたものがあります。旧字体にあるような画数の多い文字の一部分を、省略して書くような場合です。そういった俗字・略字が、新字体に昇格するケースもあったようですが、単に異体字として手書きの時に使われることがしばしばあります。
また一般に俗字と言われるものの中には、皆さんもよくご存じの有名な文字もあります。例えば、「吉」の上の「士」が「土」になったものや、「高」の上の「口」の縦棒が上下につながったもの、いわゆる「はしご高」などがあります。
これらはよく人名で使われるため、誰々さんの字はこっち、などと意識されることが多いようです。「吉」の字の違いは、某有名牛丼チェーン店の看板を見て気づいたかたも多いのではないでしょうか。


俗字と言われるものの一例

異体字の生まれたわけ③:誤字・写し間違い

俗字や略字として通用した文字とは違い、異体字の発生理由の一つとして単に誤字ということもあるようです。元々手書きの文字を書き写したときに、元の字形が不明瞭だったり、書き写す字形を誤ってしまったりの理由で、発生したものだと言うことです。
日常の中で起きた単なる間違いであれば、誤字と認識され修正されて終わりですが、これが戸籍の登録などの処理で起きた場合、それがその戸籍を持つ人にとっての「正字」なってしまったわけですから大変です。いずれにせよ戸籍ができたころの話ですから、今となっては誰がどう間違えたかなんて知る由もありませんね。

特に渡邊さんの「邊」「邉」、斉藤さんの「斎」「齊」など、細部が複雑でいかにも書き間違えが起きそうな字で、大量に発生してしまったようです。


異体字の多い文字の例

まとめ

異体字は様々な理由で生まれ、使われてきました。現代では戸籍も含む多くの文書がデジタル化され、規格にある文字以外の使用が難しい場面も増えてきています。コンピュータの世界では、UnicodeやJIS規格の拡張、あるいはIVSと言った仕組みの中で表現できる文字も増えましたが、特に人名などに使われる文字はまだまだ苦労することが多いようです。どうしても標準的な文字以外の異体字を使わなければならないとき、IVSの含まれるフォントや外字ソフトといったものをうまく利用できるとよいかと思います。

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