こんにちは。 営業担当です。
昨年イースト社内で実施していたアドベントカレンダーから特に人気だった内容をブログにも掲載することにしました。 今回は「心理的安全性」についてです。
前置き
先日SEカレッジで「なぜ心理的安全性が今注目されているのか?チームで成果をあげるための活用法」というセミナーに参加し、前々から言葉だけは良く耳にしていた「心理的安全性」について学ぶきっかけとなりました。 本記事は「心理的安全性」とはなにか、組織で心理的安全性を高めるにはどうすればよいのかといったことを、以下2つの書籍で学んだことのアウトプットとして執筆しました。
参考書籍:石井 遼介(著) タイトル:心理的安全性の作り方
参考書籍:原田 将嗣(著) タイトル:最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55
心理的安全性とは
・psychological safety(サイコロジカル・セーフティ) ・ハーバード大学教授のエイミー・C・エドモンドソンさんが定義 ・「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけ るリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」
心理的安全性が注目されている背景
・Google が2012年に開始した労働改革プロジェクトの調査「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」で注目された ・2015年に心理的安全性が生産性の高いチームづくりに最も重要であることを発表
Google が突き止めたチームの効果性に影響する因子
・もっとも重要なのは「心理的安全性」 ・チーム内でいつもしゃべるのは一人だけで他のメンバーはいつも黙っているチームは失敗するが、ほぼ同じ時間だけ全メンバーが発言するチームは成功する
画像引用元:https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/#identify-dynamics-of-effective-teams
心理的安全なチームとは
エドモンドソン教授の定義から、心理的安全性なチームとは「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」と言える
しかし現実は…
ほとんどの職場に自然と生じてしまう「対人関係のリスク」が「健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をする」ことを阻害してしまう
対人関係のリスクのカテゴリ
エドモンドソン教授は、対人関係のリスクを大きく4つのカテゴリーに分離 1.「無知」だと思われたくない → 必要なことでも質問をせず、相談をしない 2.「無能」だと思われたくない → ミスを隠したり、自分の考えを言わない 3.「邪魔」だと思われたくない → 必要でも助けを求めず、不十分な仕事でも妥協する 4.「否定的」だと思われたくない → 是々非々で議論をせず、率直に意見を言わない
心理的「非」安全な職場
対人関係のリスクに怯える職場 ↓ 心理的「非」安全な職場 ↓ 行動すると罰せられるなら行動しないほうがマシ ↓ メンバーは必要なことでも行動しなくなってしまう
つまり、「非生産的な職場」になってしまう
心理的安全によくある誤解
🙅♂️ アットホームな職場(人間関係は良好、仲は良いんだけど…) 🙅♂️ ヌルい職場(ダラダラ仕事している) ↓ 🙆♂️ 心理的安全性はチームのためや成果のために必要なことを、発言したり、試してみたり、挑戦してみたりしても、安全である(罰を与えられたりしない)ということ
心理的安全 × 仕事の基準の4現象
仕事の基準
仕事の基準が低いチーム 売上の多くを稼ぐ部署が別にあって、期限もなく新事業の立ち上げに取り組んでいている、とか 法律や制度に守られて、変化が少ない市場でシェアを持っている、とか 妥協点が低い = 高い目標を設定しても妥協してすぐに下方修正したりする 仕事の基準が高いチーム 🙅♂️ 目標を高く設定する 🙆♂️ 妥協点が高い = 目標の達成が困難でも、粘り強く行動する
心理的安全性と仕事の基準のマトリックス
画像引用元:石井 遼介(著) タイトル:心理的安全性の作り方
ヌルい職場 🥱
・「ま、このぐらいでいいいか」 ・心理的安全性は高い(意見したり、協力したりもする) ・ただし、クオリティの低いアウトプットでも怒られず、納期も厳しくない
サムい職場 🥶
・「余計なことは言わないでおこう」 ・チームの成果のためや、チームへの貢献を意図して行動すると罰を受けるかもしれないというリスクがある職場
キツい職場 😩
・「余計なことは考えず、成果を出せ」 ・助けられない、相談できない、でも高いノルマが課せられる
学習する職場 😃
・「キツい職場」では罰や不安でメンバーを努力させる ・「学習する職場」では次の4つが努力の源泉となる ・【サポート】成果が出ていない時にも、罰や不安でなく相談に乗ってくれたり、アイデアをくれたりする ・【意義】組織・チームプロジェクトとして、大義や意味がある目標が設定さており、やりがいや成長実感が感じされる ・【みかえり】まだ成果には至らなくとも、望ましい努力をしている時に承認や感謝を伝えてもらえたり、より適切な行動を促してもらえたりする ・【配置】適材適所で配置されること、自発的・自律的に努力できるようになる
健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)
・組織論では3つのコンフリクト(衝突)が定義されている 1.人間関係のコンフリクト = 人の好き嫌い 2.タスクのコンフリクト = 意見の衝突 3.プロセスのコンフリクト = 仕事をたらい回す
画像引用元:石井 遼介(著) タイトル:心理的安全性の作り方
・「心理的安全性が担保されている状況下では、タスクのコンフリクトだけは業績にプラスの影響がある」という研究結果がある
日本版「チームの心理的安全性の4つの因子」
・エドモントン教授は心理的安全性を計測する質問を発表している = 米国版 ・ただし、日本と米国では文化・社会構成面等の前提が大きく異なるため、株式会社 ZENTech で日本版の設問(尺度)を開発した ・その結果、日本の組織では以下の4つの因子があるとき心理的安全性が感じられるということがわかった 1.話しやすさ(何を言っても大丈夫) 2.助け合い(困った時はお互い様) 3.挑戦(とりあえずやってみよう) 4.新奇歓迎(異能、どんと来い) ・米国版:無知・無能・邪魔・ネガティブ、罰・不安が「ない」状態を目指す ・日本版:4つの因子が「ある」状態を目指す
『話助挑新』(わじょちょうしん)
- 話しやすさ ・「何を言っても大丈夫」 ・報告や連絡、意見や立場の表明、雑談も含めた情報共有や、指示や依頼を理解するための質問などが飛び交っている ・あえての反対意見や、問題やリスクが共有され、またそれが歓迎される 2.助け合い ・「困った時はお互い様」 ・日常的にリーダーや同僚と相談でき、ミスやトラブルがあったとき建設な対話ができる 3.挑戦 ・「とりえあずやってみよう」 ・挑戦の結果が判明する前に、まずは「挑戦したことそのもの」を歓迎できる 4.新奇歓迎 ・「異能、どんと来い」 ・社会や業界の常識にとらわれず、メンバー一人ひとりの強みや個性、新しい視点や発想を受け入れ「まとはずれ」をむしろ歓迎する ・多様性(ダイバーシティ)が包摂(インクルージョン)され、うまく活用できている組織・チーム
心理的安全性に変革をもたらす「3段階」
・1に行くほど変えにくく、3に行くほど変えやすい ・まずは「行動・スキル」「関係性・カルチャー」にアプローチする
- 構造・環境 ・会社や事業・ビジネスの仕組み自体に起因する構造・環境要因 ・パワーバランス ・組織構造 ・ビジネスプロセス ・業務上の成約
- 関係性・カルチャー ・組織、チームが背負った歴史に起因する、チームとしての習慣、行動パターン
- 行動、スキル ・一人ひとりが行動を取るかどうか ・また、的確なタイミング・品質の行動が取れるかどうか(スキル)
何から手を付けたらよいか?
・まずは職場で使う「言葉」から変えてみる ・「言語行動」 → 人間はまだ体験していないことでも言語的に聞くことで学習できる ・(例)読書や学校、研修での学習 ・「動物行動」 → 「きっかけ → 行動 → みかえり」= 体験から学ぶ ・言葉の力 = 会社のミッションや事業の展望(ビジョン)、あるいはリーダーの声かけによって人々は協働できる ・言葉が「きっかけ」となる ・きっかけ:「君のしている仕事は重要だ」 ・行動:好きな仕事により多く取り組む ・みかえり:仕事自体が楽しい + 重要なことをしている実感
心理的安全性を高める言葉の一例
言葉の種類
・「きっかけ言葉」 = 人々の行動を促す言葉 ・「きっかけ言葉」で相手が行動しやすいように促す ・「おかえし言葉」 = 相手の行動や結果を受け止める言葉 ・「おかえし言葉」で相手が取ってくた行動を受け止める(承認する) ・「承認」は「即座」にすることが効果的
例1:○○さん、おはようございます
・NG言葉:「おはようございます」 ・「誰か来たからみんなに挨拶」→「他でもない自分に話しかけられている」 ・「名前付きの言葉がけ」によって、「挨拶をきっかけに部下の側から発言や相談されることが増えた」という多くの報告がある ・挨拶のイメージ「目下や若者 → 目上の人」 ・語源(一挨一拶・いちあいいっさつ)からすれば上司・リーダーから部下・メンバーの状態を知るために挨拶する ・一挨一拶:禅の言葉。師匠が弟子の修行の進み具合や状態を確認するための「問答」
例2:止まっていることって、なんですか?
・NG言葉:「なんで終わっていないの?」 ・「なぜ?」「Why?」には相手を咎めるニュアンスがあり、相手を萎縮させることはあっても仕事を前に進める効果は高くない ・「なぜ?」とたずねられたとき「自分の悪い点、至らない点を責められている・咎められている」と解釈し、自動的に謝罪や反省をしてしまう傾向がある ・「なぜ/Why」ではなく「なに/どこ = What/Where」を用いて事実を明らかにしていく
例3:○○の観点では、こう思います
・NG言葉:「こっちの立場も考えてくださいよ!」 ・立場が違うだけなのに私たちは「相手の意見 = 相手そのもの」と捉え、人そのものを評価しがち ・「あの人は話が通じない」「あいつはわかっていない!」「嫌い」 ・まずは「自分と意見の間に少し距離をおいた」この言葉を使う ・「個人 VS 個人」の対立を「課題やゴール VS 〇〇の立場」という構図に「スライド」させる
リーダーシップとフォロワーシップ
・心理的安全性を作るにはチームの「全員協力」が前提 ・チーム全員が「心理的安全なチームづくりは、リーダーとメンバー全員の役割」と認識することが大事 ・フォロワーシップ ・リーダーの言動に対して建設的な批判をし、自発的で担当業務以上の仕事をすること ・リーダーが、いいフォロワーであること ・メンバーの発言に対して関心を示し、サポートに入ることが増えていけばメンバーがリーダーシップを発揮する機会が多くなる ・リーダーシップ・フォロワーシップの最大化を目指す ・リーダーがフォロワーシップを発揮することで、チームの「話しやすさ」「助け合い」因子が高まる ・メンバーがリーダーシップを発揮することで、チームの「挑戦」「新奇歓迎」因子が高まる
あとがき
会社や組織では「コミニュケーションが大事」とは良く叫ばれている言葉だとは思います。 「コミニュケーションが不足している!」といった声が上がると、 「じゃあ一発飲み会でもするか」なんて短絡的な話に持っていかれてしまうこともあります。 今流行中の「1on1」などといったコミュケーションを醸成するための施策も、
・なぜ( Why )コミュケーションが必要か ・どのような( What / How )コミュケーションが必要なのか
といったことがおろそかになっていると、導入したところで絵に書いた餅になってしまいそうです。 会社や組織にとって必要なコミュケーションとは何なのか、 今回「心理的安全性」について学ぶことで少しながら理解できたような気がします。
そしてソフトウェア開発もチームで行う仕事です。 例えばコードレビュー一つとっても、「キツい職場」ではレビュワーが過剰に厳しい指摘をしてレビュイーを萎縮させたり、「ヌルい職場」ではレビュワーが「ま、いっか」と妥協することが多くなったりしてしまうのではないかと思います。 クオリティの高い仕事をしていく上でも、ソフトウェア開発の現場でも心理的安全性を高めていくことが非常に重要ではないかと改めて感じました。
ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである
引用:トム・デマルコ(著) タイトル:『ピープルウェア』
ではまた。